問題は解けるが意味は分からない!
3年生の授業で、n進法の問題を一通りやったあとの休み時間に、ある生徒が私の所に来て言いました。
「先生、n進法の問題は全部解けるようになりました。ところで、n進法って何ですか?」
思わず苦笑しました。1年生のときはこの子たちを教えていないので、担当教員がどのような授業をしたのか分かりませんが、今の高校数学の現状を象徴する発言だと思いました。解き方を憶えて、問題を解けるようにはするが、そもそも意味は分かっていない。受験で使う人はともかく、受験で使わない人にとっては、このような数学の学習は、はっきり言って無意味だと思います。
次の授業で、そもそも論から学び直しをしました。
そもそもなぜ十進法なのか?
そもそも、「ラジアン」って何ですか?でも書きましたが、当たり前を問い直すことは、学びの出発点です。
「なぜ、私たちは十進法を使っているのでしょうか?」 そう発問しても、生徒には発問の意味すら分かりません。十進法は当たり前すぎるのです。
十進法というのは、1から9まで数を数えて、もう一つ数が増えると、繰り上がりが発生する数え方です。小学校1年生で、この繰り上がりをどうやって学んだか憶えていますか?
算数のお道具箱にあった「数え棒」
私が小学生1年生だったのは数十年前ですが、今でも、算数のお道具箱のワクワク感は憶えています。色々な道具が入っていたと思いますが、特に心を引かれたのは、色とりどりのおはじきです。あと、白い数え棒が入っていたことを憶えています。この数え棒を使って、次のように繰り上がりを学びました。
数を数えながら1本ずつ数え棒を机の前に出して、10本になったら、輪ゴムでとめて10のかたまりを作ります。この作業を繰り返します。
この輪ゴムでとめたかたまりが十の位です。23という数字を理解するには、輪ゴムでとめた数え棒のかたまり2つと3本の数え棒をイメージします。
生徒には、この原点に返って考えさせます。
「さて、十本の数え棒を輪ゴムでかたまりにしましたが、別に十本である必要はありません。5本でもできます。これが5進法です。5進法での\(23_{(5)}\)は、輪ゴムでとめた5本の塊2つと3本、つまり、十進法での13を表します」と解説します。
ここで、もう一度最初の発問をします。「なぜ、私たちは十進法を日常的に使っているのでしょうか?」
当たり前を問い直すことでの生徒の気づき
5本で繰り上がって数を数えることも可能であることを、小学校1年生での学びを思い起こすことで認識できると、ようやく、発問の意味が分かります。それでも、なかなか理由が分からないようなので、さらにヒントを与えます。
「初めて数を数えられるようになったとき、どうやって数を数えていたと思う?今でもやることがあると思うけど……」と投げかけると、ようやく、「あぁ、そうか!」というリアクションが帰ってきます。
「分かった班は挙手して!」と発言を促すと、いくつかの手が上がります。
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