合同式 \(\rm mod\) は難しくない!
合同式は、教科書では発展的内容となっています。教科書では、かなり厳密に公式の証明を行っているため、導入が難しく、文字通り「発展的内容」とあつかう場合が多いのではないでしょうか。かつての私もそうでした。
しかし、実際は、合同式は難しくなく、使える場合は大幅な立式の簡略化につながるので、私は「基礎事項」として、すべての高校生が身につけるべきだと思います。
導入に工夫を!
合同式の性質を厳密に証明していると、時間がかかるし、「難しい」、「よく分からない」という印象を与えてしまいます。ですから、私は、ごく簡単に導入するようにしています。
\(\rm mod\) の定義
\(a\) を \(m\) で割った余りと、\(b\) を \(m\) で割った余りが等しいとき、
\(a \equiv b\pmod m\)
と表し、合同式と呼ぶ
まずは、上の定義を理解し、
\(10\equiv 7\equiv 4\equiv1\equiv-2\pmod 3\) などが成り立つことを理解します。
合同式の和
次に、合同式の四則演算に進むのですが、厳密に証明すると面倒なので、具体例を使って、次のように実践的に説明します。
例 \(a\) を \(5\) で割った余りが \(3\)、\(b\) を \(5\) で割った余りが \(2\)であるとき、\(2a+3b\) を \(5\) で割った余りを求めよ。
合同式を使わなければ、次のような解答になります。
\(k,~l\) を整数とすると、\(a=5k+3,~b=5l+2\)
\(2a+3b=2(5k+3)+3(5l+2)\)
\(=5(2k+3l)+2\times3+3\times2\)
\(=5(2k+3l)+12\)
\(=5(2k+3l+2)+2\)
よって、余りは\(2\)
上の解答をよく観察すると、\(5\)がかかっている部分は、\(5\)で割った余りは\(0\)ですから、余りを計算する上では、無駄な計算です。
そこで、余りに関係する部分だけにアンダーラインを引いて、アンダーラインの部分だけを、合同式の定義に従って抜き出して、元の計算と併置すると、
元の計算 | 合同式で表現 |
\(k,~l\) を整数とすると、\(a=5k+\underline{3},~b=5l+\underline{1}\) | \(a\equiv3,~b\equiv2\pmod5\)のとき、 |
\(2a+3b=\underline{2}(5k+\underline{3})+\underline{3}(5l+\underline{2})\) | \(2a+3b\) |
\(=5(2k+3l)+\underline{2\times3+3\times2}\) | \(\equiv2\times3+3\times2\pmod5\) |
\(=5(2k+3l)+\underline{12}\) | \(\equiv12\pmod5\) |
\(=5(2k+3l+2)+\underline{2}\) | \(\equiv2\pmod5\) |
つまり、合同式の計算は、元の計算の必要な部分のみを抽出したものになっています。
そして、等式と同じように合同式の和を計算することができることが分かります。
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