ルートの計算は、中高の数学では基本中の基本ですね。簡単だと思っていませんか?
実は、正しい方法でかけ算ができている人は、実は中高生の \(\displaystyle\frac13\)もいないようです。
例えば、\(\sqrt{5}\times\sqrt{10}\) をどうやって計算しますか?
\(\sqrt{5}\times\sqrt{10}=\sqrt{50}=5\sqrt{2}\) と計算している人は、悪い癖をつけている人です!!
この投稿を最後まで読んで、直してください!!
上の程度なら悪い癖といっても、悪影響はわずかです。でも、次の問題ではどうでしょう?ヘロンの公式を習っていない人も、ルートの計算部分だけ見て下さい。
次のような\(\triangle \rm ABC\)の面積をヘロンの公式で求めよ。
\(a=7,~b=9,~c=12\)
最終的には、次のルートの計算をすることになります。
\(\triangle \rm ABC=\sqrt{14\cdot7\cdot5\cdot2}\)
ほとんどの生徒たちは、かけ算と割り算の筆算で \(\sqrt{14\cdot7\cdot5\cdot2}=\sqrt{980}=\sqrt{7^2\times2^2\times5}=14\sqrt{5}\) と計算していました。何という非効率な計算でしょう!どう非効率か分かりますか?
非効率ではすまない!
次の例は、非効率ではすみません。悪い癖をつけている人は解けません。ベクトルは習っていないという人も、計算部分だけを見て下さい。
次の \(2\) つのベクトルの内積と、そのなす角 \(\theta\) を求めよ。
\(\vec{a}=(7,~3),~\vec{b}=(5,~-2)\)
すぐにできると思ったのですが、生徒たちは悪戦苦闘しています。
\(\cos\theta=\displaystyle\frac{29}{\sqrt{58}\sqrt{29}}\)
問題は、右辺のルートの計算です。生徒たちは、一生懸命、分母を
\(\sqrt{58}\times\sqrt{29}=\sqrt{1682}=\sqrt{841\times2}\)
と、筆算で計算しています。しかし、当然 \(841\) が素因数分解できず、行き詰まってしまっていました。
計算の方向が真反対!!
どちらも、ルートのかけ算をする際、ルートの中身同士のかけ算をやってしまう悪い癖が、顕著に表れた例です。
ルートを簡単にするには、ルートの中身を因数分解して、平方数を見つけます。ルートのかけ算は、与えられた状態で既にある程度の因数分解がされています。それをかけ算するのは、計算の方向が真反対です。2階にいて、1階に下りるのに、とりあえず3階に上がるようなものです。
最初の \(\sqrt{5}\times\sqrt{10}=\sqrt{50}\)とやってしまった人は、おそらく、上の二つの例でも、悪戦苦闘する人です。
正しい計算方法
かけ算をするのではなく、逆に、平方数を見つけるために適切に因数分解するのが正しい計算方法です。
間違った計算方法
- \(\sqrt{5}\times\sqrt{10}=\sqrt{50}=5\sqrt{2}\)
- \(\sqrt{14\cdot7\cdot5\cdot2}=\sqrt{980}=\sqrt{7^2\times2^2\times5}=14\sqrt{5}\)
- \(\cos\theta=\displaystyle\frac{29}{\sqrt{58}\sqrt{29}}\)\(=\displaystyle\frac{29}{\sqrt{1682}}=\frac{29}{\sqrt{841\times2}}\)
正しい計算方法
- \(\sqrt{5}\times\sqrt{10}=\sqrt5\times(\sqrt5\times\sqrt2)=5\sqrt2\ \)
- \( \sqrt{14\cdot7\cdot5\cdot2}=\sqrt{(7\cdot2)\cdot7\cdot5\cdot2}\)\(=\sqrt{7^2\cdot2^2\cdot5}=14\sqrt{5} \)
- \( \cos\theta=\displaystyle\frac{29}{\sqrt{58}\sqrt{29}}=\displaystyle\frac{29}{(\sqrt2\times\sqrt{29})\times\sqrt{29}}\)\(=\displaystyle\frac{29}{29\sqrt2}=\displaystyle\frac{1}{\sqrt2} \)
ある授業でアンケートをとると、中高生の実に\(\displaystyle\frac23\) は、間違った方法でルートのかけ算をします。
正しい方法を学んで終わりではない!
正しいルートのかけ算の方法は理解されたと思います。しかし、問題は、正しい方法を理解したことでは終わりません。正しい計算方法を教えて数日後に同じような計算をさせると、ほとんどの生徒の悪い癖が直っていなくて愕然とします。。理解しただけでは、悪い癖は直らないのです!それは、実は当たり前のことです。
私は、数学の基礎技能はスポーツや音楽の基礎練習と同じだと思っています。スポーツで、コーチに悪い癖を指摘されたら、それだけで直るでしょうか? 当然、理解しただけでは直りません。コーチに教えられた正しいフォームを、何度も反復して、身体に憶えさせるはずです。
しかし、数学では、理解できたらそれで終わりだと、教師も生徒も考えているようです。もっというと、理不尽な提出物で答を丸写して提出物を出し、答の丸覚えで定期考査をやり過ごす「態度」を育て、学年が進むに従って、理解することすら放棄する生徒が増えていくように思えます。
脳内で数学的イメージを操作できるまで、基礎基本は反復する!
数学の基礎基本は、見た瞬間から答が出るまでためらうことなく鉛筆が動くように、反復練習する必要があります。運動や音楽の基本練習と同じです。音楽では、きちんと音階が吹けても、毎日、音階練習を繰り返すはずです。ピアノには、有名なハノンという教本があり、ひたすら運指の練習をさせます。
しかし、今、高校の数学でそんな反復練習をさせることは、ほとんどないと思います。そのための適切なツールがないからです。
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