私はチョークと黒板にこだわる!
ICTの波が学校にも及んでいる。生徒は自前のタブレットを持ち、各教室には、プロジェクターが配置されている。私は、ICTは大好きで、このブログでも、PUCFlashという私が開発しているアプリを紹介している。
しかし、私は、授業では、黒板とチョークにこだわっている。板書をしまくり、生徒には、素早くノートを取ることを要求する。授業が終わると、チョークの粉が大量に黒板のさんに溜まる。私がよく使う教室の掃除監督の先生には、「白い粉地獄」と恐れられている。
こんな私にとって、ショックだったのは、HAGOROMOチョークがなくなったことだ。滑らかで、適度な硬さで、実に書きやすかった。今は代替品で授業をしているが、似て非なるものだ。もう数年になるので、代替品にも大分慣れたが、今でもたまに、古チョークの中からHAGOROMOチョークが出土することがあり、宝物を掘り当てた気分になる。しかし、あっという間に消耗するから、はかないものだ。
私以外にも、チョークと黒板にこだわっている人種が、世界には存在している。それは、数学者だ。
ホワイトボード、電子黒板に以降しつつある今でも、かたくなに黒板とチョークを使い続ける人々がいる。世界の名だたる数学者たちだ。
常に難解な数式や図式の解を求める彼らには強いこだわりがあるのだ。黒板は答えを導き出すための最高のツールなのだろう。それは最高のチョークを使用することで実現する。
数学者たちにとっての最高のチョーク、それは日本の羽衣文具が発売した「ハゴロモ(HAGOROMO)”フルタッチ”」チョークである。
炭酸カルシウムを主原料とするこのチョークは、なめらかで書き味に優れ、折れにくいことから、数学者の間では「チョーク界のロールスロイス」とまで言われる最強のアイテムなのだ。
世界の名だたる数学者がこぞって日本のチョークを買い求める理由
授業は、教員と生徒の格闘技場だ!
私の授業を受ける生徒は大変だ。50分間鉛筆を置く時間はない。私の大量の板書を、必死でノートに書き写す。小テストでは、「鉛筆を早く動かせ!」という私の激励?のもと、必死で問題を解く。
グループ討論をしたり、自分たちで考える時間を確保するためにも、板書を早くノートの書き写すトレーニングをすることは、私の授業法の根幹をなす。
最初のうちは、顔を上げたり下ろしたり、まるで、鳥がエサをついばむようにして、1単語ずつ板書を写していた生徒が、1ヶ月ほどすると、一目見て、理解して、顔を上げることなく、一つの意味のかたまりをノートに書くことができるようになる。「鉛筆を早く動かせ!」、「図は大きくフリーハンドで!」などの激励?の声のもと、生徒はノートと格闘している。
小テストの風景も、半年経つと様変わりする。最初のうちは、ゆっくりゆっくり計算していて、教室は静かであるが、半年後は、猛スピードで計算する生徒の鉛筆の音が、「ガッガッガッ」という音を発し始める。
これで、やっと、私の生徒になったという実感がする。
数学は、鉛筆を動かして考える!
勉強ができない生徒ほど、答をじっっと眺めて、目で憶えようとする。そんなことで、数学ができるようになるわけがない。鉛筆を動かした量だけ、数学ができるようになると私は実感する。
数学は、鉛筆やチョークで、数式を表現することで、考えることができる。だから、上の引用にあるとおり、数学者はその道具であるチョークにこだわるのだ。
答案を書くスピード=考えるスピードである。速く書くことが速く考えることにつながり、速く考えることが速く書くことにつながる。この2つが、絡み合って、らせん階段を上るように、数学の力がついていく。だから、板書を速くノートに取るトレーニングは、脳の回転をあげるトレーニングに他ならない。意味を理解しなければ、絶対に速く板書をノートすることはできない。
こう書くと、じっくり考える時間がないのではという批判を受けそうだ。
しかし、現実には、私の授業では、グループに分かれて生徒同士討論したり、数学の本質的理解につながるような発問を行って、じっくり考える時間がたくさんある。その集大成がこのブログだ。
素早くできることは猛スピードで済ませるからこそ、じっくりと考える時間を確保できるのである。
ポイント穴埋めプリントやプロジェクターの弊害
その対極にあるのが、最近流行りだした、プロジェクターを用いて教材を提示し、ポイントのみを、配布したプリントに穴埋めさせるような授業形態だ。
私も、若い頃、板書を写すのが遅いことに業を煮やして、ポイントのみを書き込めばいいプリントを配って授業をしたことがある。確かに、授業のテンポはよくなるし、生徒は分かった気になる。
この「分かった気になる」がくせ者だ。結局家で復習をしなくなり、分かったはずのことも頭から抜け落ちて、テストでは散々な結果になった。
板書を写すスピードが遅いから、プリントの穴埋めにするという時点で敗北だ。板書をノートするスピードが遅いのなら、速くなるようの鍛えるべきだ。
チロルチョコレートが和ませる
ここまでお読みになって、鬼教師だと思われたと思う。確かに、私は、決して優しい教師ではない。しかし、厳しさだけでは生徒はついてこない。
チョークと黒板以外に、私が授業で使うツールがある。チロルチョコレートである。

大量に箱買いしている。生徒は私の教材(PUCFlash)の間違いを指摘したり、私の発問に手を上げて答えたりした場合に、ご褒美として、1個生徒に進呈する。これは結構効果があって、私の授業では、高校生が発問に手を上げて答えるという、奇跡のようなことが起こる。
最近の私の授業の「3種の神器」
今の私の授業での「3種の神器」は、「チョークと黒板」、「チロルチョコレート」、「PUCFlash」である。
PUCFlashは、このブログでも紹介しているアプリだ。開発を始めて5年になる。GIGAスクール構想に合わせて、精力的に開発と教材作成を行ってきた。ところが、せっかくタブレットが導入されたのに、PUCFlashが、最近、授業で使えない。家庭学習用のツールとしてしか活用できていない。
理由は、学校のネットワークが遅すぎるのだ。このことについては、稿を改めよう。
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