引き算は、足し算と同じなので、ここでは、かけ算とべき乗をやってみましょう。和の場合と同じように、余りの計算の必要な部分にアンダーラインを引いて、合同式の定義に従って併置します。
合同式のかけ算
例 \(a\) を \(5\) で割った余りが \(3\)、\(b\) を \(5\) で割った余りが \(2\)であるとき、\(ab\) を \(5\) で割った余りを求めよ。
元の計算 | 合同式 |
\(k,~l\) を整数とすると、\(a=5k+\underline{3},~b=5l+\underline{2}\) | \(a\equiv3,~b\equiv2\pmod5\)のとき、 |
\(ab=(5k+\underline{3})(5l+\underline{2})\) | \(ab\) |
\(=25kl+5k\times2+5\times3l+\underline{3\times2}\) | \(\equiv3\times2\pmod5\) |
\(=5(5kl+2k+3l)+\underline{6}\) | \(\equiv6\pmod5\) |
\(=5(5kl+2k+3l+1)+\underline{1}\) | \(\equiv1\pmod5\) |
例 \(a\) を \(5\) で割った余りが \(3\)であるとき、\(a^3\) を \(5\) で割った余りを求めよ。
元の計算 | 合同式 |
\(k\)を整数とすると、\(a=5k+\underline{3}\) | \(a\equiv3\pmod5\)のとき、 |
\(a^3=(5k+\underline{3})^3\) | \(a^3\) |
\(=5^3k^3+3\cdot5^2\cdot3k^2+3\cdot5\cdot3^2k+\underline{3^3}\) | \(\equiv3^3\) |
\(=5(25k^3+45k^2+27k)+\underline{27}\) | \(\equiv27\pmod5\) |
\(=5(25k^3+45k^2+27k+5)+\underline{2}\) | \(\equiv2\pmod5\) |
このように、合同式の計算では、足し算、引き算、かけ算、べき乗の計算が等式の計算と同じようにできることが分かります。
これだけで解答の大幅な省力化できる!
以上のように、合同式は決して難しくありません。数学が苦手な人でも、簡単に使いこなすことができます。たったこれだけでも、次のような余りの問題を解く際、大幅な答案の簡潔化をすることができます。
\(n\) を \(5\) で割った余りが \(2\) であるとき、\(n^6\) を \(5\) で割った余りを求めよ。
\(n=5k+2~~\)(\(k\) は整数) とおいて、\(n^6=(5k+2)^6\) を二項定理で求める気にはなれませんよね。しかし、合同式を使うと瞬殺です。
\(n\equiv2\pmod5\) のとき、\(n^6\equiv2^6\equiv64\equiv4\pmod5\)
\(n\) は自然数とする。合同式を用いて、\(n^5+n^2+2\)は\(3\) の倍数でないことを証明せよ。
[1] \(n\equiv0\pmod3\) のとき、
\(n^5+n^2+2\equiv2\pmod3\)
[2]\(n\equiv1\pmod3\)のとき、
\(n^5+n^2+2\equiv1^5+1^2+2\equiv4\equiv1\pmod3\)
[3]\(n\equiv2\pmod2\)のとき、
\(n^5+n^2+2\equiv2^5+2^2+2\equiv38\equiv2\pmod3\)
いずれの場合も、\(n^5+n^2+2\equiv0\) にならないから、題意は成り立つ。
ここまでの内容は、1時間程度で展開が可能です。すべての高校生に、合同式の便利さを学んで欲しいと強く思います。
割り算だけは要注意(発展事項)
このように、素晴らしく便利な合同式ですが、1つだけ気をつけなければならないことがあります。
それは、合同式の割り算です。
次のページで説明しますが、合同式の割り算は、不定整数方程式を合同式を用いて簡単に解く場合以外は使いませんので、理解できない場合は、以上の内容だけ使えるようにすれば、十分です。
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