どちらが正しいかは実験で確かめる!
どちらが正しいかは実験をやってみれば分かります。区別のつかない十円玉を100回位投げて、表表の回数を数えればいいでしょう。本当は授業でやってみたい所ですが、残念ながら、他クラスと進度を合わせる必要から、そんな時間はありません。そこで、私は、次のような思考実験を行います。
その前に、区別のつくコインなら、表表の確率は \(\displaystyle\frac14\)で間違いないことを念押しします。さて、その思考実験は次のようなものです。
私が、区別のつかない10円玉2枚を、教卓の上で1万回投げます。そのうち、表表の回数を、\(2\)人の人に数えてもらいます。
この\(2\)人の人選がこの思考実験の鍵を握ります。
一人は視力が0.5位で、表裏は識別できますが、2枚の十円玉の区別は全くできません。
ところが、もう一人は、視力が2.0で、一方の十円玉にある微かな傷を見ることで、2枚の十円玉を区別することができます。私が1万回投げて、表表の出た回数を2人に数えてもらった結果、二人の数えた回数に違いは出るでしょうか?
手を上げさせると、違いが出ると思う人が少なからずいます。
2枚とも表が出たときに、2枚の十円玉の区別がついても、つかなくても、1回と数えることに違いはありませんよね。つまり、1万回投げたときの表表の回数は、二人で差が出ないはずです。
区別のつくコインなら、表表の確率は \(\displaystyle\frac14\)で間違いないと確認していますから、区別がつく人のカウントした回数は、全体の \(\displaystyle\frac14\)程度のはずです。区別がつかない人も同じ回数をカウントしているはずですから、区別がつかなくても、表表の確率は、 \(\displaystyle\frac14\)ですね。
この考察は、グループディスカッションをさせることが望ましいです。結論だけを教えても、「スキッと分かった!」という感じにはなりません。なんか、言いくるめられたような感じで終わってしまいます。自分たちでとことん話し合えば、「確かにそうだ」という実感になります。
区別がつかなくても、客観的には別のもの
区別がつくか、つかないかは、人間の側の問題です。人間の能力の限界から区別がつかないだけで、2枚の十円玉は、明らかに別の十円玉であり、ルーペで見るとか精査すれば、必ず区別できます。
だから、区別がつかないものでも、確率の場合の数を数えるときは、区別して数えなければならないのです。
でも、おそらく生徒は、直前に学んだ「同じものの順列」との関係で、モヤッとした感じが残っているはずです。
\(\rm A_1A_2A_3B_1B_2\) のように、区別のつく3つの\(\rm A\)と区別のつく2つの\(\rm B\)を並べる方法は、\(5!\)通りなのに、\(\rm AAABB\)のように、区別がつかない \(\rm A 3\)つと\(\rm B 2\)つの場合は、同じものを含む順列なので、\(\displaystyle\frac{5!}{3!2!}\)になります。
場合の数のときは、区別がつくときと、つかないときで差が出るのに、なぜ、確率の計算では、差が出ないのでしょうか?
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